平成14年 秋の観音詣りのお話 

ご縁のありがたさ 

大本山總持寺貫首 大道晃仙 紫雲台猊下

 本日はご本山に参拝をいただきまして、こころから厚く御礼申しあげます。私は、北海道で生まれ育ちましたが、若い頃、駒澤大学の本科に入りました時に、三か月ほど成願寺さんにお世話になりました。他に下宿を借りておりましたが、そこを引き払いまして中野坂上の成願寺から大学に通ったわけです。

 なぜお世話になったのかと申しますと、当時のご住職でありました長谷川孝善大和尚に法幢師のお役をおつとめいただき、僧としての出発点・法戦式をさせていただいたからです。

 定光寺の先代がやはり若い頃、成願寺さんにお世話になっていたこともありまして、親子二代のご縁をいただいたわけです。法戦式のような重要な式を挙げるためには、「二日や三日ばかりお寺にいただけではだめだから、成願寺から通ったらどうか」というおすすめで、お世話になるご縁をいただきました。長谷川大和尚はお若い時分からひじょうに修行をされた方と伺っておりまして、たいへん威厳のある方でございました。

 わたしがお世話になった折は、なにぶんにも戦争中、アメリカ軍B 29大空襲で成願寺は丸焼け、この總持寺も半分程焼失したのです。本山顧問・長谷川大和尚の心労は察するに余りあったことと存じます。

 時代が移り、成願寺山内の方、檀信徒のみなさまが、永く伝えられた寺の法灯をお守りくださり、ありがたいことと感謝するばかりでございます。

 そしてまた、わたくしがご本山におります時に、成願寺のみなさまがご参拝くださるという感慨深いご縁をいただきましたこと、こころから感謝申しあげてご挨拶とさせていただきます。      合掌