『成願寺の茶道教室』

 裏千家茶道教授 矢島宗翠

 

 私が恩師に連れられて成願寺の山門をくぐり、はじめて方丈様にお目通りを頂き、茶道教室の講師として迎えられましてから、今年で足掛け12年になります。この間、方丈様、奥様、副住職様はじめ、雲水の方々、事務の方々、成願寺の全ての皆様の温かいご理解の中で今日まで続けてまいりました。

 私たちが学んでおります「裏千家茶道」について、簡単にご紹介をさせて頂きます。

 今から四百五十年ほど前に「千利休」(せんのりきゅう)によって、鎌倉時代に禅僧により中国から伝わっていた「喫茶」の形が「侘び茶」という形で深められ、孫の「千宗旦」に至り、ほぼ今の形に完成されました。その後、日本の歴史の中で変遷を続けながら、現代まで受け継がれています。そして国内はもとより、広く海外の人たちにも親しまれています。現在、京都には十六世坐忘斎(ざぼうさい)家元がいらっしゃいます。

 『「茶道」というと和菓子と抹茶を頂くことで、たったそれだけのために正座をして、やかましい作法を学ばなくてはいけない非常に窮屈なものだ』という先入観を多くの方がお持ちです。確かに、表面的に見ますとその通りかもしれませんが、それではなぜ、今日までほぼ450年前のスタイルで途切れることなく伝わり、しかも海外の方たちにも支持され続けてきたのでしょうか。

 その答えのひとつは、「茶禅一味」(ちゃぜんいちみ)という精神が根底に流れているからだと思います。茶道は抹茶を点(た)ててお客様をおもてなしする「亭主」と、それを頂く「客」が同じ部屋に同座して成立いたします。

 亭主はお茶を点てる為の場所(点前座・てまえざ)に座りますが、「茶をたてること即ち坐禅をすること」という気構えが大切です。そして、客は出された一服のお茶を心から感謝して頂くのです。

 私たちは、このような単純で簡単なことが、実はとても深く、身に付けることの難しさをお稽古を重ねていくうちに知ってまいります。

 初めてお稽古をなさる方は「思っていたのと違う。こんなに大変だと思いませんでした」という感想を抱かれます。ですが、時間をかけて少しずつ慣れていきますと、気持ちの中に変化が出て、「足はしびれますが、気分が爽快になります」という感想をお持ちになります。

 月に二回のお稽古なので、前回のことをすっかり忘れることもありますが「一期一会」(いちごいちえ)ですから、毎回新しい気持ちで、同じ事を繰り返しながら積み重ねていくうちに、いろいろなことが解ってまいります。

 私は常々「茶道の稽古は登山のようなもの」だと考えております。裾野は長く、景色も代わり映えしませんので、ただただ同じような道を歩き続けます。

飽きてしまうこともあります。しばらくして、少し上のほうに行くと、歩くことにも慣れて、景色を眺める余裕が出てきますが、少しずつ道が険しくなります。それでも、山を登る楽しさや自然に触れる喜び、自分がここまで頑張った自信、頂上を極めたいという目的が生まれます。

 やっと、頂上付近にたどり着いて、達成感に浸りますが、周りを見るともっと高い山がそびえています。恐らく一生かかっても最高峰を制覇することは困難かもしれませんが、登ってみなければ分からないことが沢山あります。その中でも、知る楽しさ、味わう楽しさ、仲間と一緒に学ぶ楽しさはとても得難いものです。

 現在、女性3名、男性3名という構成でお稽古をしております。

 お仕事をお持ちの方、学齢のお子様をお持ちの方、ご家庭にご高齢の方がいらっしゃる方など、バックグラウンドは様々ですが、月に二回、時間の許す限り集まり、ただただ、「湯を沸かし、仏のために茶を点て、人のために茶を点て、最後は自分のために茶を点てる事即ち、茶禅一味」ということを目指して、しびれる足を労わりながら、楽しく、長い山道を登っております。

 ご一緒にゆっくりと歩いてみませんか。 合掌

 

*お稽古について

毎月第一・三火曜日 午前9時〜午後2時(稽古の時間は応相談)

会費 月五千円

 初心からの指導をいたします。 まずは見学にお越し下さい。