平成22年秋の観音詣り 説教

「祈りの基本」

        愛知県 豊川閣妙厳寺 山主 本宮顯道

 

 ようこそご参拝くださいました。これから本殿へお進みになり、ご祈禱を受けていただくわけですが、その前にお詣りの作法についてお話しをさせていただきます。

 私どもはお寺ですので、基本的には合掌でお詣りいただくわけですが、ご祈禱中、成願寺参拝団と読み上げられましたら、皆さん一斉にパン、パンと手を打ってください。また、個人のお名前、さらに願い事、家内安全ですとか身体堅固などが読み上げられましたとき、自分の願い事のところで、パン、パンと打ってください。なぜ手を打つかと申しますと、皆さんには豊川稲荷・だ枳尼真天(だきにしんてん)、諸仏諸菩薩の功徳を感じていただくということです。ご祈禱というのは合掌と同じで、両方から合わせないと交わりません。ご祈禱中に太鼓とお経がぴたっと合うときがあります。そういうときに参列の皆さまは感極まってパン、パンと打つ。あるいは、自分の名前や願い事を伝えるために手を打つんですね。こういうことを感応道交(かんのうどうこう)と申します。

 それからご祈禱ではいったい何をお願いするのかといいますと、願い事は一つでいいですね。家内安全、諸縁吉祥、商売繁盛などと並べ立てる方がいますけれども、そういうものではない。いちばん大事なことを一つお願いしますと、お寺のほうで、二つ、三つ付帯して祈ってくださいます。

 そして、自分がその願い事に執着してもいけないんですね。病気全快を祈る方は、もちろん自分がよくなるようにと祈るわけですが、ご自分の周りにも病気の方がみえますね。その方々もよくなりますようにと祈る。あるいは商売なら、商売相手の皆さんもよくなりますようにとお願いしなくてはいけません。普く(あまねく)一切に及ぼすように願わないと、本来の祈りではない。それが祈りのいちばんの基本でございます。それを間違わないようにしていただくと、巡り巡ってまた皆さんに返ってくるわけです。

 

 仏法を護る神さま

 当山は妙厳寺というお寺でございますが、大きな鳥居があるのをご覧になられたかと思います。鳥居といえば神社でしょう? と不思議に思う方がいらっしゃると思いますので、少しご説明を申します。

 お釈迦さまが亡くなって五百年たった頃、お釈迦さまを敬うための塔が建てられるようになったそうです。そうしますと、門が必要になるんですね。門というのは結界です。東西南北につくったその門が、石を二重にかけた鳥居のようなかたちであった。そうしたものがチベットから中国、朝鮮、そして日本に伝わったということです。それが山門であり、鳥居なのです。ですから、お寺に鳥居があっても不思議でも何でもないわけです。

 豊川稲荷の鳥居には、両側に卍の紋が彫ってあります。これは仏教のお稲荷さまの鳥居である証でございます。昔は、お寺に神さまがお祀りされていることはあたりまえでした。鎮守と申しまして、仏法の、そしてお寺の護り神さまなのです。     合掌