小笹会留学報告

    英国オックスフォード大学 山田真樹夫

 

 小笹会の奨学金を頂いて早3年、おかげさまで昨年夏、念願の修士号を英国オックスフォード大学にて取得することが出来ました。専攻は現代中東研究、修士論文のテーマは『サウジアラビアの日本及び中国との関係、1990-2009:補完と競合』です。

 英国で最先端の研究に触れ続けたいとの思いから、修士号取得後もこちらに残る決断をし、現在は同大学の博士課程(国際関係論専攻)に在籍しています。また、大学に提出した修士論文は、その後こちらの学会で発表する機会を頂くことができ、その成果が今年学術大手のRoutledge出版社から新たに創刊される専門誌、Journal of Arabian Studiesに掲載されることも決まりました。

 このように、少しずつ、知識の〈消費者〉から〈生産者〉へと変身を遂げつつあります。

 私の専門とする中東─アジア関係研究は、英語を共通語とする世界の学界において今まさに立ち上がりつつある新興領域です。その中で日本人・アジア人としての視点を積極的に提示し、新たな研究潮流の創造に貢献していくことはいわば自分の天命と考え研究に取り組んでいます。

 ところで研究の中心となる活動は、もちろん研究書やメディアから発信される情報を読み、その内容について思考をめぐらせ、自分の考えを文字にしていくことですが、それと同時に実は人の輪を生み出していくこと、そして人との良いコミュニケーションをとっていくことも大切な要素です。いくらインターネットが発達した時代でも、本当に重要な情報を集めるには、生身の人間との、理想をいえばお互いに尊敬し合える関係が欠かせませんし、また学界もひとつの人間の共同体である以上、人間の思考や感情の機微に対する洞察力がなければ成功しません。自分はそういった点で人間としての修養がまだまだなので日々精進を重ねたいと思っております。

 また、異国の地で研究といういわば個人経営の仕事を続けていると、人は自分ひとりでは生きていけないということを痛感します。自分の努力はもちろんのこと、その上で人の手助けがあって初めて仕事が成り立ちます。自分に手を差し伸べてくれる人々への感謝の気持ち、そしてこちらからも積極的に人々の支えになるという心構えを常に忘れずにいたいと思っております。合掌